沢村凜 『タソガレ』
- 2016.05.31 Tuesday
- 22:02
JUGEMテーマ:読書感想文
人の顔を認知できないので、同級生や職場の人のことを
覚えられない症状を持つ里美。
親や姉妹の事は、なんとなく認知できるが
その姉妹の伴侶や子供は、認識できないのは
とてつもなく不安なことなのでしょう。
相貌失認(そうぼうしつにん)を調べてみると
脳障害や遺伝によって発症するものだと
判りましたが、先天的なものはトレーニングによる
機能アップしかないようです。
後天的なものは、相貌失認になった要因を取り除くことで
障害が回復するとありますが、それも必ずしも
治ることでない難病の一種なのでしょう。
里美は、自分のことを
「昼にもなじめず
夜に溶け込めず
タソガレどきは 短すぎる」
とノートに走り書きをする。
ここで、タソガレと相貌失認が繋がります。
タソガレの語源・由来は
日が暮れる頃、あたりが薄暗くなり
人の顔が見分けにくく、「誰だあれは」という意味で
「誰そ彼(たそかれ)」と言った。
この由来だと里美のことと一致しており
彼女自身から出た言葉のタソガレは
「誰そ彼(たそがれ)」とピタッリ一致することが
作者の本書での狙いだったのでしょう。
恋愛ものとしてみると、ハラハラドキドキ感は
ありますが、医学的な方向からみると
相貌失認の人の苦労が、判ります。
講談社
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