柚木麻子 『あまからカルテット』
- 2015.10.31 Saturday
- 13:30
5編からなる食と女性にまつわるストーリー。
4名ごとのストーリーを展開させて、最後に取りまとめの話で
締めているが、前の4編の一部に環境設定が抜けているものが
あるので、ちょっと突飛おしもないような展開になっているのが
残念です。それ以外は、特に気にもならずにスイスイと読めてしまう
タイプの作品でした。移動中に読むのには、適したの作品でした。
『恋する稲荷寿司』に登場する咲子は、三十路のピアノ講師。
男運が悪く、以前の彼氏はチャラオ。
職場には、ピアノの旋律をする人かピアノを習いに来る生徒の父兄のみ。
将来性と出会いは、かなり暗いもの。
しかし、花火大会での出会いが彼女の人生を明るい方向に
進路を変換していく。ここまでの展開ならそこら辺にある小説と
同じでしょうが、花火大会で出会った人を探すのがまるで逆シンデレアです。
偶然貰ったいなり寿司の味を頼りにグルメ雑誌の編集員やブログに味の特徴を
載せて情報を募たりと、様々な情報収集法を行います。
情報戦略と言うよりは、隠し味に気が付いたグルメ料理家の舌のお蔭で
相手を特定するのは、ちょっとしたスパイ小説を読んでいるようで
面白かった。これまで読んできた作者の他の作品よりも、1つとびぬけた作品だと
感じました。
文藝春秋社
【言及リンク】